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第1章 はじめに#

この章の概要

  • 対象:これからマニュアル全体を読み始める方(全員が最初に読む章です)
  • 所要時間の目安:15〜20分(読むだけで、操作はありません)
  • この章で学ぶこと:マニュアルの使い方、院内表彰システムの全体像、今後何度も登場する専門用語

1.1 このマニュアルについて#

このマニュアルは、Google Apps Script(グーグル アップス スクリプト、Googleが無料で提供しているプログラムの仕組みです)という技術で作られた「院内表彰システム」を、ご自身の医院に導入するための手順書です。

もともとこのシステムは、にしだ歯科医院で使われているものです。このマニュアルは、他の医院でも同じ仕組みを一から作れるように、パソコン操作に自信がない方でも迷わず進められるように、できるだけ細かく手順を説明しています。

本書は、市販のパソコン入門書と同じように、「読みながら、その場で操作すれば完成する」ことを目指して書かれています。何かを検索して調べたり、他の資料を読み足したりする必要がないように、必要な情報はすべてこの10章の中に収めています。

こんな方のために書きました#

  • Google Apps Script(プログラムの一種)を触ったことがない方
  • 「スプレッドシート」や「Google Drive」は使ったことがあるが、それ以上の専門知識はない方
  • 医院のスタッフ表彰・感謝を伝え合う仕組みを、自分たちの手で立ち上げたい方

プログラミングの知識は一切必要ありません。すでに用意されているプログラム(コード。人間が読み書きできる文字で書かれた、コンピューターへの指示書のようなものです)をコピーして貼り付ける作業と、スプレッドシートに文字を入力する作業が中心です。

本書だけで完成するために用意されているもの#

  • 章ごとに区切られた、番号付きの操作手順
  • 迷ったときに立ち返れる用語辞典(1.10節)
  • 困ったときのためのトラブルシューティング(第10章)
  • 実際の画面を貼り付けるためのスクリーンショット枠(![スクリーンショット:◯◯の画面]
  • 図解として起こすとよい部分の提案(📊 図解提案
  • 各章末の「理解度チェック」(次に進む前に、内容を振り返るための簡単な確認問題)

このマニュアルの読み方#

  • 上から順番に読み進めれば、ゼロの状態から本番公開・日常運用まで進められるように構成されています。
  • 各章の手順には番号がついています。番号の順番どおりに操作してください。番号を1つでも飛ばすと、後の手順でつまずく原因になります。
  • ![スクリーンショット:◯◯の画面]」と書かれている場所には、実際の操作画面の画像を貼り付けてご利用ください。コロンの後ろの説明文は、「この場所には、どんな状態の画面を撮影して貼ればよいか」を示すメモです(本マニュアルはテキストのみでの配布を想定しているため、画像枠のみ用意しています。実際に画面を撮影する際のコツは、README.md にまとめています)。
  • 📊 図解提案」と書かれている場所は、文章だけでは伝わりにくい関係性や流れを、図やイラストにして補足すると理解がぐっと深まる部分です。印刷物として仕上げる際は、デザイン担当の方にこの部分をイラスト化してもらうことをおすすめします。
  • 詰まったときは、第10章「トラブルシューティング」を確認してください。

記号の意味#

記号 意味
実際に行う操作(クリックする、入力するなど)
⚠️ 間違えやすいポイント・注意事項
💡 知っておくと便利な補足情報
よくある質問
📊 図解にすると理解しやすい部分の提案
🔍 専門用語のミニ解説(本文中に初めて出てきたときに添える説明)
![スクリーンショット:説明] ここに操作画面の画像を貼る場所。説明文は撮影すべき内容のメモ

1.2 全体の目次#

  1. はじめに(このページ)
  2. 必要なもの
  3. Google Drive の準備
  4. Spreadsheet(スプレッドシート)の準備
  5. Apps Script の設定
  6. デプロイ(公開)
  7. 運用
  8. 管理画面の使い方
  9. バックアップ
  10. トラブルシューティング

図解提案(今後のイラスト化候補)

図解提案:この目次を「地図」のようなイラストにして、今どの章にいるのか(現在地)が一目でわかるページを作ると、読者が迷いにくくなります。たとえば「準備」「構築」「公開」「運用」の4つのエリアに10章を分け、双六(すごろく)のようなイラストにするのもおすすめです。章番号を大きく描き、読み終えた章に色を塗っていく「進捗すごろく」にすると、達成感も演出できます。

1.3 院内表彰システムとは#

「院内表彰システム」は、スタッフ同士が日頃の感謝の気持ちを、投票という形でお互いに贈り合う仕組みです。

スマートフォンやパソコンから専用のページを開き、「この人はいつも頼りになる」「困っているときに助けてくれた」といった感謝の気持ちを、決められた「賞」に投票します。投票が集まったら、管理者が結果を集計して、表彰式などで発表することができます。

紙の投票用紙を配って回収して集計する、という従来のやり方に比べて、次のようなメリットがあります。

従来の紙の投票 院内表彰システム
用紙を印刷し、配布し、回収する手間がかかる スマートフォンから投票するだけで完結する
手作業で集計するため、時間がかかりミスも起きやすい 集計は自動で行われ、リアルタイムで結果を確認できる
集めたコメントを、あとから整理して清書する必要がある 投票結果や感謝コメントを、そのままExcelファイルとして出力できる
誰が投票したか・していないかの管理が難しい 管理画面で、投票済み・未投票がひと目でわかる

1.4 誰が何をするシステムなのか#

登場する人は、大きく2つの役割に分かれます。

役割 できること
スタッフ(投票する人) 自分の名前を選んで、感謝を伝えたい同僚に投票する。コメントを添えることもできる
管理者(システムを運用する人) 投票期間・スタッフ名簿・賞の内容を設定する。投票状況を確認し、結果をExcelやCSVで出力する

同じ人が両方の役割を持つこともあります。たとえば院長先生がスタッフとして投票しながら、同時に管理者として運用することも可能です。医院の規模にもよりますが、管理者は最低でも2名(正・副)を決めておくと、1人が休んでいても運用が止まらず安心です。

用語ミニ解説:管理者

このマニュアルでいう「管理者」とは、特別な資格が必要な役職ではありません。「設定」シートに書かれたパスワードを知っていて、スプレッドシートを編集できる人のことを指します。院長先生である必要はなく、受付担当のスタッフなど、パソコン操作に慣れた方が担当することも多いです。

1.5 システムを支える3つの部品#

このシステムは、次の3つの部品を組み合わせて動いています。難しく感じるかもしれませんが、それぞれの役割はシンプルです。台所にたとえるなら、①は「食材を保管する冷蔵庫」、②は「調理する人(レシピどおりに動くシェフ)」、③は「盛り付けに使うお皿や飾りを保管する棚」のようなイメージです。

┌─────────────────────┐
│ ① Googleスプレッドシート │ ……スタッフ名簿・賞の一覧・投票期間などの「元データ」を保管する場所
└─────────────────────┘
            ↑↓ 読み書きする
┌─────────────────────┐
│ ② Google Apps Script    │ ……①を読み書きしながら、スマホやパソコンの画面を作って配信するプログラム
│    (プログラム部分)      │
└─────────────────────┘
            ↑↓ 画像を取りに行く
┌─────────────────────┐
│ ③ Google Drive          │ ……ホーム画面やアイコンに使う写真・画像を保管する場所
└─────────────────────┘

図解提案(今後のイラスト化候補)

図解提案:上記のテキスト図を、実際のアイコン(スプレッドシートの緑色のアイコン、Apps Scriptの水色のアイコン、Driveの三角形のアイコンなど、Google公式のアイコンデザインを参考に)を使ったイラストに起こすと、直感的に理解しやすくなります。矢印には「読み書きする」「画像を取得する」というラベルを添えてください。3つの部品を三角形に配置し、中央に「スタッフのスマートフォン」のイラストを置いて、そこに向けて画面が届く様子を描くと、より完成度の高い図になります。

導入担当者が行う作業は、難しいプログラム改修ではありません。この3つを正しく紐づけて、スプレッドシートの中身とDriveの画像を「設定」していく作業が中心です。コード(プログラムの文章)そのものは、基本的に一切変更しません。コピーして貼り付けるだけです。

このマニュアルでは、第3章でGoogle Drive、第4章でSpreadsheet、第5章でApps Scriptと、この3つの部品を順番に準備していきます。なぜこの順番なのか気になる方のために補足すると、「先に写真を用意しておく(第3章)→ 写真の置き場所(URL)を含めてスプレッドシートに情報を入力する(第4章)→ そのスプレッドシートをプログラムに接続する(第5章)」という、実際の作業がスムーズに進む順序になっています。

1.6 投票する人から見た画面の流れ#

スタッフが実際に投票するときの画面の流れは、次のようになります。

①ページを開く
②自分の名前を選ぶ
③「投票を開始する」を押す
④賞ごとに、感謝を伝えたい人を選ぶ(賞の数だけ繰り返す)
⑤選んだ人にコメントを書く(任意)
⑥最後に確認画面で内容をチェックする
⑦送信する
⑧「THANK YOU」画面が表示されて完了

図解提案(今後のイラスト化候補)

図解提案:この8ステップを、スマートフォンの画面を模した8枚のミニ画面イラストとして横に並べる「画面遷移図」にすると、読者は自分が今どの画面を操作しているのかイメージしやすくなります。実際のスクリーンショットが集まった段階で、この形に差し替えるのがおすすめです。各ミニ画面の下に「①ホーム画面」のようなラベルを添えると、第6章のテスト手順を読むときの地図としても使えます。

この一連の流れは、スマートフォンでの操作を想定して作られています。難しい入力はなく、候補者の写真や名前をタップして選ぶだけの、直感的な操作です。所要時間の目安は、賞の数にもよりますが、1人あたり3〜5分程度です。

1.7 管理者から見た画面の流れ#

管理者は、投票期間中いつでも管理者専用の画面にログインして、次のことができます。

  • 今何人投票したか、あと誰が投票していないかを確認する
  • 賞ごとに、今のところ何票集まっているかをリアルタイムで見る
  • 寄せられた感謝コメントを検索しながら読む
  • 集計結果をExcelファイルやCSVファイルとしてダウンロードする

管理画面の詳しい使い方は、第8章で説明します。

1.8 「年度」という考え方#

このシステムでは、4月から翌年3月までを1つの「年度」として扱います。たとえば2026年7月に投票を実施した場合、これは「2026年度」の投票として記録されます。

2026年度= 2026年4月 〜 2027年3月
2027年度= 2027年4月 〜 2028年3月

同じ人は同じ年度の中で1回しか投票できません。年度が変わったら、新しい投票期間を設定することで、また投票を受け付けられるようになります(年度更新の手順は第7章で説明します)。

ヒント

「なぜ4月始まりなのか」と疑問に思われるかもしれません。これは、多くの日本の医療機関・企業が4月始まりの年度で人事評価や表彰制度を運用していることに合わせた仕様です。もし1月始まりなど別の区切りで運用したい場合は、プログラムの改修が必要になります(詳しくは第10章10.8節)。

1.9 「試用版」について#

このマニュアルの元になっているファイル一式には、画面上部に「【試用版】こちらの投票内容は本番には反映されません」という注意書きが表示される仕組みが組み込まれています。これは、本番前にお試しで動作を確認できるようにするためのものです。

用語ミニ解説:試用版と本番

「試用版」は、練習・お試しの状態を指します。この状態で投票しても、正式な記録としては使われません。「本番」は、実際に医院で運用する、正式な状態のことです。試用版から本番へ切り替える作業については、第6章で詳しく説明します。

本番運用に切り替える際には、この試用版表示をどう扱うか(消すか、残すか)を判断する必要があります。詳しくは第6章で説明します。

1.10 専門用語ミニ辞典#

このマニュアルの中で繰り返し登場する言葉を、あらかじめまとめておきます。わからない言葉が出てきたら、いつでもこのページに戻ってきてください。マニュアル全体を通して、この辞典に載っている言葉づかいに統一しています。

Googleのサービスに関する言葉#

用語 意味
Googleアカウント Googleの各種サービス(Gmail、スプレッドシート、Driveなど)を使うためのID(メールアドレス)とパスワードのセット。無料で作成できる
Googleスプレッドシート(スプレッドシート) 表計算ソフト。Excelとほぼ同じ感覚で使える。このシステムでは元データをすべて管理する
シート(タブ) 1つのスプレッドシートファイルの中にある、複数のページ(表)のこと。画面下部のタブで切り替える
セル スプレッドシートのマス目1つ1つ。「A1」「B2」のように場所を表す
行・列 「行」は横一列の並び(数字で表す:1行目、2行目…)、「列」は縦一列の並び(アルファベットで表す:A列、B列…)
Google Apps Script(GAS) スプレッドシートなどを自動で操作するための、Googleが無料で提供するプログラムの仕組み。このシステムの「頭脳」にあたる
Apps Scriptエディタ Apps Scriptのプログラムを書いたり貼り付けたりするための画面。「エディタ」は「編集するための道具」という意味の英語
関数(かんすう) プログラムの中の、ひとまとまりの処理のこと。「◯◯を実行する」というときの「◯◯」にあたる部品。たとえば testConnection は「接続をテストする」という処理のかたまりです
Code.gs/index.html/style.html/script.html このシステムを動かすために必要な4つのプログラムファイルの名前
デプロイ(公開) Apps Scriptで作ったプログラムを、実際にインターネット上で「Webアプリ」として使えるようにする操作
Webアプリ ブラウザから開いて使えるアプリケーション。専用アプリのインストールは不要
Google Drive(ドライブ) ファイルを保管しておくためのGoogleの倉庫サービス。このシステムでは画像を保管する
共有設定(リンクを知っている全員) Driveのファイルを、リンクさえ知っていれば誰でも見られるようにする設定
ファイルID/スプレッドシートID Google DriveやGoogleスプレッドシートの1つ1つのファイルに割り振られた、世界に1つだけの番号。多くの場合はURLの中に含まれている
権限(けんげん) プログラムが、あなたに代わってスプレッドシートやDriveを操作してよいかどうかの許可のこと。初めてプログラムを実行するときに、確認画面が表示される

このシステム特有の言葉#

用語 意味
賞(しょう) 投票の対象となる表彰カテゴリ(例:プロフェッショナル賞)
投票期間 スタッフが投票できる期間
年度(ねんど) 4月〜翌年3月をひとくくりにした期間
有効フラグ 「スタッフ」シートで、投票対象にするかどうかを示す TRUEFALSE の印
管理者パスワード 管理者専用画面に入るためのパスワード
ランキング 賞ごとの得票数の順位。速報値(ダッシュボード)と正式記録(シート保存)の2種類がある
本番(ほんばん) 実際に医院で運用している、正式な状態のこと。「練習」ではないという意味で使う

パソコン操作の基本用語#

用語 意味
クリック マウスのボタンを1回押すこと
右クリック マウスの右側のボタンを1回押すこと。メニューが表示される
ダブルクリック マウスのボタンを素早く2回押すこと
ドラッグ マウスのボタンを押したまま動かすこと。範囲を選ぶときなどに使う
タップ スマートフォンやタブレットの画面を指で軽く触れること(パソコンの「クリック」にあたる)
コピー&ペースト(コピペ) 文字などを複製(コピー)して、別の場所に貼り付ける(ペースト)操作。Ctrl+CCtrl+V(Macはcommand+Ccommand+V
URL インターネット上の住所。ブラウザの一番上に表示される https://~ から始まる文字列
ブラウザ インターネットを見るためのソフト。Google Chrome、Safari、Microsoft Edgeなど
タブ(ブラウザの) 1つのブラウザウィンドウの中で、複数のページを切り替えて表示できる仕組み。画面上部に並ぶ見出し
プルダウンメニュー クリックすると、選択肢が下に一覧で表示される部品。選択肢の右に小さな三角(▼)が目印
Ctrl+Z(元に戻す) 直前の操作を取り消すためのキーボード操作。入力を間違えたときに便利(Macは command+Z

1.11 このマニュアルで扱わないこと#

あらかじめお伝えしておきたいのは、このマニュアルが対象としている範囲です。次のようなことは、このマニュアルの範囲外となります。

  • Code.gs などのプログラムの中身を書き換えて、機能を追加・変更すること(例:賞ごとに投票人数を変えられるようにする改修)
  • Google Workspace(組織向けGoogleアカウント)の契約・管理方法
  • パソコンやスマートフォン自体の基本操作(電源の入れ方、Wi-Fiへの接続方法など)

これらが必要になった場合は、プログラムに詳しい担当者や、契約している情報システムの窓口に相談することをおすすめします。それ以外の「導入」から「日常運用」までは、すべてこのマニュアルの中で完結するように書かれています。

1.12 この章のまとめ#

  • このシステムは「Google Drive」「Spreadsheet」「Apps Script」の3つの部品でできている
  • 導入担当者が行うのは、主にスプレッドシートへの入力とDriveへの画像アップロードという「設定」作業
  • スタッフは名前を選んで投票するだけのシンプルな操作、管理者は投票状況の確認や結果の出力ができる
  • わからない用語が出てきたら、1.10節の用語辞典に戻って確認する
  • プログラムの改修が必要な要望が出てきた場合は、専門の担当者に相談する

理解度チェック#

次の章に進む前に、簡単に振り返ってみましょう。答えられなくても心配いりません。もう一度該当箇所を読み返せば大丈夫です。

  • [ ] このシステムを支える3つの部品の名前を、諳んじて言えますか?(1.5節)
  • [ ] 「年度」とは、何月から何月までの期間ですか?(1.8節)
  • [ ] 「試用版」と「本番」の違いを、自分の言葉で説明できますか?(1.9節)

次の第2章では、導入作業を始める前に用意しておくべきものを、チェックリスト形式で確認します。